STORY

ファームサイドの足あと

代表佐川が阿部梨園での経営改善プロジェクトを経て、ファームサイド社を起業し、現在に至るまでの道のりです。

PROLOGUE

東京大学農学部、同大学院修士課程を卒業した佐川は、外資系メーカーの研究開発職で太陽光発電ビジネスに4年従事した後に退職。宇都宮でローカルビジネスに関わる機会を求め、地元のNPO法人と出会います。

その頃、従業員の退職を機に経営や雇用を見直す必要性を痛感した阿部梨園の代表阿部は、助け手を求めて前出のNPO法人へ相談しました。同団体経由で、農園の新しいチャレンジを手伝ってくれる若者をインターンシップで募集します。

梨園でのインターンシップを紹介された佐川が応募するかたちで、2人は合流しました。おいしい梨、多くのお客様、それに対して山積する経営課題。本質的な経営改善に取り組む必要性を確認し合います。

2014

阿部梨園での経営改善

4ヶ月間のインターンシップのテーマを決めました。日々の業務や判断を見直す習慣やスキルが残れば、終わった後も農園として成長を続けられるのではないかという目論見です。プロジェクト名は「プロミス100」。残り250時間程度で100件ですから、2-3時間でできる地味な改善やマイナーチェンジです。事務所を掃除したり、店頭のPOPを作ったり、スタッフと定期面談を実施したり…。目標には及びませんでしたが、73件の業務改善を実施できました。

阿部とプロジェクトを進めていく中で、梨作りに捧げる情熱と、体質改善に本気で向き合う意気込みに、佐川自身も強く影響を受けました。また、当時すでに認められていた阿部梨園でもこれだけ改善の余地があるのなら、経営体質は多くの生産者にとって共通課題であり、そこに伸びしろがあると推察できました。インターン終了後もこの活動を仕事として続けたいという思いに至り、フルタイムの従業員として就職します。

従業員として加わった後、3年半で500件の改善を実施することになりました。インターンでは扱えなかったような革新的な課題や、時間のかかる施策にも取り組みました。モチベーションの高いスタッフに恵まれ、事務から現場まで生産性が大きく向上し、つくった梨が直売ですべて売り切れるようになり、小さいながらもスマートな農業経営が実現できたのです。気がついたら「畑に出ない農家の右腕」というめずらしい働き方まで生み出していました。


関連: 東大卒、デュポン、メルカリ経由で梨農園に飛び込んだ「畑に入らない農家の右腕」の正体

2017.11

阿部梨園の知恵袋プロジェクト

振り返ると経営改善に取り組み始めた当初、何から着手したらいいかわかりませんでした。企業勤めの経験から経営やビジネスの基本を知っていても、リソースが極小な個人経営の農園にはそのまま応用できず、実際なにをしたらいいのか情報収集や試行錯誤に随分と時間をかけてしまいました。

そして、知り合った生産者さんたちも、みんな同じようなことで悩み、足を止めているということを知ります。簡単なことなのに、やったことがないから、どうしたらいいかわからない。他の人はどうしているかわからない。法人化した、立派な農業経営者の体験談は真似できるとは思えない。この情報の非対称性は農業界の大きな足かせだと気づきます。

たまたま阿部梨園は、実施した小さな改善を全て記録していました。これを公開すれば、参考程度であっても、同業の生産者のみなさまの役に立てるかもしれません。そこで、インターネット上で誰でも閲覧できる、全て無料のウェブサイト(オウンドメディア)として公開することに決めました。

資金調達と仲間集めを目的に、クラウドファンディングを実施したところ、330名から450万円もの応援をいただきました。SNSで大いに話題になり、メディアにも多数取り上げられ、全国的に知られるところとなります。当初の期待どおり、「農家の経営改善とはどういうことか」「農家の経営改善には何が必要なのか」といった問題提起にも成功しました。

関連: 阿部梨園の100件を超える小さい改善ノウハウを公開するオンライン知恵袋を作りたい

2018

阿部梨園の知恵袋

2018年5月にクラウドファンディングの約束どおり、経営改善事例を「阿部梨園の知恵袋」というウェブサイトでリリースしました。話題になったおかげでハードルが上がり、制作は骨が折れ、時間もエネルギーも想定の倍以上要しています。最初の記事100件を装填しておそるおそるリリースしましたが、各方面から盛大に好意的なリアクションを受け取って一安心でした。その後、1年半をかけて300件の経営改善ノウハウを掲載しています。

以後、阿部梨園の知恵袋の存在は徐々に広く知られるようになり、多くの農業者のお役に立てている様子です。全国から感想や感謝の声が数多く寄せられています。「農家の経営改善と言えば『阿部梨園の知恵袋』」と認知されるまでになりました。

関連: 阿部梨園の知恵袋 | 農家の小さい改善実例300 by 阿部梨園

2019

FARMSIDE works 開業

経営改善PJをさらに進めつつ、阿部梨園以外の生産者さんや産地のお役にも立てればと、佐川の個人事業としてFARMSIDE worksを開業しました。企業のアドバイザリー、生産者向けのコンサルティング、講演やセミナー講師、メディアでの執筆など、早速さまざまなご依頼をいただいて今に至るまで忙しく立ち回っています。

ファームサイドとは「畑のそば」(=farmside)を意味します。農業の現場のそばに立ち、農業生産者の願いや悩みに寄り添い、課題解決を加速する存在でありたいと願ってつけた屋号です。

2020.01

ファームサイド株式会社

2020年1月、個人事業として始めたFARMSIDE worksを法人化しました。

2020.09

著書「東大卒、農家の右腕になる」

なんと、阿部梨園での経営改善プロジェクトが書籍化されることに。2020年9月、『東大卒、農家の右腕になる。 小さな経営改善ノウハウ100』としてダイヤモンド社より発売されました。400ページのやや分厚いビジネス書です。前半200ページの第一部は阿部梨園での経営改善ストーリー。後半200ページは『阿部梨園の知恵袋』から抜粋した100件のノウハウを掲載しています。
おかげさまで2023年9月現在、5刷21,000部、電子出版も含めれば2万部を超えました。多くの農業者さん、自治体や企業、JAなどの農業関連のみなさま、また業界外の経営改善や課題解決に取り組む皆様に多くお買い求めいただけました。ご感想や反響も大きく、愛される著書になったことを嬉しく思います。

NOW & FUTURE

現在、そして未来への想いを込めて

起業して3年。農家の経営改善プロジェクトや阿部梨園での事例は業界内外で広く周知されました。全国各地で毎年150回以上登壇し、自治体やJA様、企業様との連携も増えてきています。

20代に農園の片隅でたまたま思いついた「経営改善」というテーマが、すべての経営体、すべての業界において普遍的な課題で、取り組むに値するものだったことに驚いています。

これからは個別の経営支援だけでなく、業界全体として課題解決を進めるべく、連携パートナーやスタッフとともにチームでの取り組みを加速します。新しいプロジェクトもリリースします。実現したいことはまだまだ沢山、これからです。 Stay tuned!!

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